大嫌いなあの人。③‐1
僕は誰かと抱き合っていた。
お互いが相手の存在を確認するかのように抱き合いながら衣服を脱いで脱がしていく。
どちらからともなく唇を合わし愛を確かめる。
甘い吐息が唇の隙間から漏れる。
優しいキスから激しさをまし、彼の舌が僕の口内をかき乱す。
唇が離れお互いの鼻先をつけたまま、また見つめ合う。
「五月、俺はお前のことが好きだ」
胸がきゅんとし、見えない何かが一気に内側から溢れ出る。それは、名前をつけるならば確実に愛と言うものだった。
「ぼ、僕も………川野君のことが…………………」
え、ちょっと待って!!か、川野君!?僕はいったい何を!!!!!!!!!
ガバッッッッ!!
「はぁ…はぁ…はぁ…なな、ゆ、夢!?」
ぼ、僕はいったい何て夢を見てしまったんだ…。
「あ………………うぅ…ぼ、僕は望んであんな、あんな夢を見た訳じゃ…ない」
言葉に出して否定はしたものの、体は正直であった。
朝から下着を変えないといけないとか…
(こんなの初めてだ………)
※
熱くなる想いを無理やり沈め急いで家を飛び出し、途中に桂くんと出会った。
「あ、か、桂君!おはよう」
「さっちゃん!!おはよっす!!今日からテスト週間突入だけど、川野と勉強とかすんの?」
僕は川野君の名前を聞いただけなのに顔がさらに熱くなり、今朝方みた夢を思い出してしまった。
「さっちゃん…顔赤いけどなんかあったの?」
「えっ!?な、ないよ!!何もない!!!!」
じっと僕の顔を見てくる桂君。
あ、ダメだ。人に顔見られるの、やっぱり苦手だ。
「さっちゃんと俺の仲だろ?何でも言ってくれよ!!」
「か、桂君…」
僕がまだ川野君から言葉の暴力を振るわれていたとき、桂君は気にせず話しかけてくれていた。僕が無視しても本人は話しかけてくれた。そしてついこの間、桂君から好きな人がいると、ずっと片想いしていて告白なんて一生無理だとも教えてくれた。そんな大切な話を僕なんかにしてくれた桂君。僕も…今のこの気持ちが桂君と同じなら…何か力になれるかもしれない。
「あ、あのさ!!昼休み二人で話せる…かな?」
「おぉ!!いいよ♪何でも聞いちゃう!」
こうして僕は桂君に全部は話せなくても少しずつ少しずつ話していこうと決意したのだった。
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