大嫌いなあの人。②‐4
川野君は掴んでた手を離し、僕の両頬を掴み勢いよく顔を持ち上げた。
目からは大量の涙がこぼれ落ち、止めようとしても止まらない。
川野君の両手で包まれている両頬が熱い。すごく熱くておかしくなりそうだ。嫌なはずなのに心地いいとさえ思えた。
この時ハッキリとわかった。
相手は同性なのにどうしてこんな気持ちになるのか…触られたところは熱くなり、彼がしゃべる度に僕の体に電流が走る。
とても安心して気になる存在。
僕は川野君のことが、好きなんだ。
「あぁ!!!!ごめん!!!また言い過ぎたよな?別に高月のこと嫌いとかじゃないから泣き止めよ?」
川野君は涙を流す僕を見てすごく焦っていた。でも涙が止まることはなかった。僕は包まれた手の温かさと好きになってごめんなさいの気持ちでいっぱいになり涙が止められない。
(胸が・・・・苦しい)
「俺が悪かったよ!!だって高月俺に何も言ってくれないじゃないか?」
「…んぅ?な、…ヒック、何を……?」
「かわっっ!!(可愛いっ!落ち着け俺…)…………桂には、男から告白されてること言ってんだろ?お、俺は高月の友達だ!!むしろ親友と言ってもいいくらいだ!!相談の1つくらいして………ほしい」
ズキッ
(親友)
「うぅぅぅ……ごべ、ごべんなざい……………」
親友……その言葉を呪いたいくらいだ。
川野君がそう思ってるなら、僕のこの想いを絶対に告げてはならない。
ふと何かが僕を包み込んだ。目を開けてみると川野君が僕を抱き締めていた。
ビックリした僕は声を失い、今の状況がすぐには理解できなかった。
「こ、こうすれば泣き止むかと思って。俺高月に泣かれるとめちゃくちゃ困るんだよ。嫌かもしんないけど今は我慢しろよ?」
「………ぅん」
いきなりのことに僕の目からあふれでていた涙は嘘のように流れることをやめた。
(どうしよう。ビックリし過ぎて涙が止まった。でも・・・・めちゃくちゃ嬉しくて暖かくて、安心する)
川野君の腕の中、端からみたら気持ち悪い構図だろうが今は放課後。
教室には僕たち2人きり。
「高月…泣き止んだ?」
「………ううん、まだ…」
僕は嘘をついた。もう涙は止まってる。
だけどもう少し、あと少しだけこの腕の中でいさせてほしい。
「………川野君。腕…まわしていい?」
「えっ!!・・・・いいぜ。それで泣き止むなら好きなだけ抱きつけ」
「ぁりがとぅ………」
僕は川野君の背中に腕をまわした。すると僕を抱き締める川野君の力が強くなった。
「高月ちっせぇ………抱き心地いいのな……」
「う、うん!?」
僕はゆでダコ状態。
慣れないことをするものではないなと思った。
その状態が少し続いて、僕たちは離れた。泣き止んだ僕の顔を見てホッとする川野君。そして笑顔を見せながらごめん。と僕に謝った。
その笑顔が僕の心を締め付ける。
急いで残りの日誌を書いてる途中、川野君はもう1つ怒ってたことがあると言ってきた。
「桂だけが高月のことをさっちゃんと呼んでるのはずるい!!だから俺はお前のことを五月と呼ぶからな!!」
と…毎回思うが川野君は幼稚だ。
そんなことで怒る必要はないと思うのだか…川野君から名前で呼ばれるのは…実際すごく嬉しくてドキドキする。僕の心臓はもつのだろうか…
川野君から彰と呼べと言われたが、それは丁重にお断りした。
呼びたいけど呼んでしまえば僕は完全に腑抜けになる気がしたからだ。
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