大嫌いなあの人。①ー2
「・・・・ん?」
1番に目に飛び込んできたのは見慣れない真っ白の天井に、薬品の臭いが鼻をおおう。
僕はなぜか布団の中にいた。
なんだったかな・・・・と考えたが、すぐに記憶がよみがえり身体が震えだした。
人に襲われる恐怖。
(なんで僕があんな目に・・・・しかも相手は男・・・・僕も男だよ?)
「高月!」
すぐ隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「か・・かわの?」
「お前なんでひょこひょことついていくんだよ!!馬鹿じゃなねぇの!?俺がいかなかったらやられてたぞ!!」
「ご、ごめんなさ、い・・・・・・」
僕はたまらず泣き出した。
泣きたくて泣いてるわけじゃない。勝手に涙が出てくるんだ。
(僕・・・安心してる?)
あんなに言葉の暴力を振るってきた川野が僕を助けてくれた。だけど思い返せばそれは今回だけじゃない。
クラスで笑いもの・・・・川野のせいでもあるけど・・・・笑われて気分が悪くなって声をかけてくれるのは、いつも川野だった。
(僕はこいつのなんなんだ?)
「ごめん・・・・言い過ぎた。でもああいうのにもうついて行くなよ?そのときは俺を呼べ」
「・・・・なんで?川野は僕の事嫌いでしょ?」
「あ~~~・・・・・・嫌いじゃねーし・・・・むしろ「じゃあどうして変な事いうの?僕の嫌がること言うんだよ・・・・」
川野がしゃべってるときに僕は堪えきれず今まで言おうと思った事を言った。心に引っかかっていた想いを。
「・・・・高月さ、俺の事覚えてないだろ。それが腹立って・・・・八つ当たりしてたんだよ!!」
真っ赤な顔して話す川野を僕は不覚にも可愛いと思ってしまった。
「・・・・僕たち、以前あったことあるの?」
ふと昔の事を思い出す。
小学低学年、クラスになじめていない僕ともう1人。転校してきたばかりの男の子。
余りものの僕たちは余りもの同士仲良くなった。だけど3ヶ月もしないうちにその男の子はまた転校することになった。
いわゆる転勤族だったのだ。
仲良くなって、僕は毎日が楽しかった。そんな時、急に居なくなった男の子。幼かった僕は泣いた。せっかくできた大切な友達。
「あ・・・・・・あのときの川野・・・・君?」
「そうだよ。あん時の川野だよ」
「なら初めからそれを言ってくれれば僕も名前なんて聞かなかったよ。それに何年も経ってて成長してるから僕全然わかんなかったよ。ごめんなさい」
というか、やることが子供だよ。川野君。
「そうだよな・・・・あの時お前・・・・女かと思ってたんだぞ。だから高校来てクラス名簿みたらお前の名前があって嬉しくなって来て見てみれば・・・・可愛い男の子だったよ。それがショックで今まで八つ当たりしたんだよ。初恋だったのにな」
初恋・・・・・・
「ごめんね。なんか・・・・男で・・・・?」
「謝んなよ。俺が確認しなかったのがダメなんだよ。・・・・・・あのさ、今もこの想いは変わらないって言ったら高月はどうする?」
「?どの想い?」
「・・・・・・別に。(チッ、鈍いやつ)お前女みたいな顔だよな。昔も思い出してくれた事だし、友達再開な。それに今日みたいな事がまたあったらダメだし。俺がお前を守ってやるよ」
きゅん。
(きゅん?なんか胸変・・・・・・)
「女顔・・・・ありがとう・・・・じゃあよろしくお願いします」
「おう!!」
川野君は最高の笑顔で僕との再会と仲直りを喜んだ。
あんなに嫌だった川野君。
小学4年生の川野君だった。僕もあのときの大切な友達と再会できてすごく嬉しい。
でもあんなに仲の悪かった僕たちが、いきなり仲良く肩を並べ話しながら教室に戻って来たときはクラスの皆は目を丸くしてすごく驚いていた。
そのときは少し笑えた。
川野談・・・・
久しぶりにあった五月は変わらず可愛いかった。あのときのこと覚えてはいるのだろうか?
なんて話かけようか。俺の心臓は大きな音を立てながら足早に教室へと向かった。
だが・・・・目の前に居るのは五月ちゃんではなく五月君だった。男だったのかよ・・・・
でもめちゃくちゃ可愛く育ってる。
やばい。男でも好きだ。・・・・でも向こうは俺のこと覚えてもいなかった。
それに腹を立てた俺は言葉の暴力・・・・とやらを使っていじめてみた。俺を思い出せと。
思い出すはずがなかった。
五月は昔に比べてひどく自分の殻に閉じこもっていた。
昔と同じ・・・・俺がひきずり出してやる。
そんなこんなでいろいろあり思い出してくれたが、かんじんの告白はできなかった。
でもいつか好きといって、言わせてやる。
その自身はかなりあった。
それはまた別の話で・・・・。
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