お昼ご飯を持って桂君と屋上へと急いで向かう。
屋上には誰もいなかった。季節は秋から冬に変わりつつある。もう肌寒い。冷たい風が頬をなでる。
「さっちゃん。もっかい聞くけど…そんなに川野のこと好きなん?」
その質問に、僕は恥ずかしい気持ちでいっぱいになるも、目の前の桂君は笑いもせず、ただじっと僕の目を見続けていた。
そんな相手に失礼な態度をとれるわけもなく、僕は再度覚悟を決めて桂君に気持ちをぶつけた。
「お、男が男を好きだなんて…気持ち悪いよね?で、でも僕は川野君じゃなきゃダメなんだ…でも、でも川野君を目の前にしたら泣いちゃうし、何を話したらいいかわからないんだ。僕って本当にき、気持ち悪いよね?ごめんなさい…」
「あはは♪」
え?か、桂君笑ってる?
「さっちゃん。男が男を好きって言うのは俺は全然いいと思うよ!!確かに周りに知られたら好奇の目で見られたりおかしな目で見られたりするけど、同じ同性だからダメなの?子供産めないからダメなのかな?俺は、恋愛は自由にしていいものだと思うから…う~ん、頭混乱してきた」
「桂君……ありがとう」
僕は安心した。今心から笑えている。
「あ、さっちゃん今ちょー可愛い♪ごちそうさまでした☆ちなみにさ、俺の好きな人も男だぜ」
「へっ!?そうなの?な、なら僕も桂君の相談にのりたい!!!!」
お互い好きな人が同性ということで僕たちは前よりもっと仲良くなった。以前の僕からしたらすごい進歩だ。嬉しくてしょうがない。
この気持ちを忘れずにずっと大切にしていきたい。
昼休みが終わりに差し掛かるとき、桂君からテスト週間に入ったから勉強に川野を誘えば?と提案された。
朝にも言われたことを思い出し、僕はどうするか悩んだ。
(誘ったら川野君は機嫌治してくれるかな?また、…この間みたいに抱き締められたいし抱きつきたい…)
「川野なら絶対OKする。ちなみにあいつ一人暮らしだから遠慮とかしなくて全然いいぜ♪」
(てか……川野はさっちゃんにベタ惚れなの、わかんないかな?お互い鈍いのな………そこは敢えて黙っておこう!!いつか二人が笑って報告してくれる日を俺は楽しみに待つ。もしかしたらその日は近いかもしれない!)
予令が鳴り、教室へ向かう途中に桂君からそう言われたことを思い返し意気込んでいると教室の前に川野君が見えた。さっきのことを謝って一緒にテスト勉強しようとちゃんと伝えようと思い僕は川野君の元へと駆け寄ろうとしたが、
「か!川野………くん………」
川野君の周りには女の子達がいた。そうだ、川野君はモテるのだ。僕一人にかまってくれるはずがないのだ。何を…期待してたのだろうか…
一人の女の子が川野君に抱きついた。川野君は嫌がる素振りも見せていない。女の子はそれをいいことにずっと抱きついてなかなか離れない。すごく……気持ち悪い。吐きそうだ………
「さっちゃん?え?大丈夫?なんか顔真っ青だよ!?」
「だ、大丈夫だけど……ちょっとトイレ行ってくるね…」
僕は口を押さえながら桂君に伝えトイレへと急ぐ。その時川野君と目が一瞬だけ合ったけどすぐに目を逸らした。
(あの状態の川野君は………嫌だ、見たくない……)